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YOSORO「生成AI」と「人的資本経営」の盛り上がり──“挑戦者”に聞いた、2023年の振り返りと2024年のトレンド予測
「生成AI」と「人的資本経営」の盛り上がり──“挑戦者”に聞いた、2023年の振り返りと2024年のトレンド予測

「生成AI」と「人的資本経営」の盛り上がり──“挑戦者”に聞いた、2023年の振り返りと2024年のトレンド予測

2023.12.25
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2022年12月に登場してから、1年中話題にのぼり続けた対話型AI「ChatGPT」。「GPT-4 Turbo」といった技術の進化はもちろんのこと、開発元であるOpenAI CEOのサム・アルトマンの突然の解任劇も含めて、話題に事欠かなかった。

【前編】「技術革命の恩恵を受ける絶好の機会」OpenAI CEO サム・アルトマン氏が語ったChatGPTの可能性

DIMEトレンド大賞、日経トレンディ―2023年ヒット商品で1位を獲得するなど、2023年はChatGPT中心の1年だったと言っていいだろう。

そんな2023年をどのように振り返り、2024年はどのような年になっていくと考えているのか。YOSOROで過去に取り上げたことのある方々にアンケートを実施。その内容をお届けする。掲載は氏名の五十音順。

有川鴻哉 / Hotspring 代表取締役CEO

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

ChatGPT・AI。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

2023年は多くの人にとって「AI元年」と呼ぶべき年になったと思います。技術レベルでは年々飛躍的な進化を遂げていましたが、ChatGPTというアプリケーション・UIの登場によって、いよいよその便益を誰もが享受できる時代が到来したと言えるでしょう。2024年以降は、現在中心となっている会話型・チャット型のみならずあらゆるUI/UXとして日常生活レベルに浸透し始め、IoTならぬAIoTの時代へと突入していくのを楽しみにしています。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

引き続き、AIの日常生活への浸透が最注目領域ですが、VRもそろそろ実用フェーズとして盛り上がってくる頃でしょう。そういったIT・バーチャル中心の激流の中で、対局にある人間的・現実的な価値の重要性にフォーカスする動きが活性化すると考えています。

Hotspringは、極めて人間的・現実的な行動である「旅行」を取り扱う会社です。さらに、スタッフがお客さまの相談に乗るという極めて人間的なアプローチを5年以上続けており「AI時代における人間ならではの価値を見出し・最大化する」というテーマは個人的にも重視しております。

上館誠也 / Shirube代表取締役CEO

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

生成AI、人的資本経営。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

ChatGPTが一般的に普及し始めており、誰もが自分の頭だけでなくAIを活用して考える時代になったという点において、大きなターニングポイントになった年ではないでしょうか。その中で、「人間の役割や人間らしさとはなにか?」ということに社会の注目が集まっているように感じます。各社各様の取り組みを進めている「人的資本経営」の本質も、「人間とはなにか?」が向き合うべき問いのように思います。

単純にエンゲージメントサーベイやタレントマネジメントシステムの導入、あるいは女性管理職比率の向上といったことではなく、どのように人間と向き合っていくのか。AIが多くの役割を代替する中で、「人間の役割とはなにか?」という単純な思考だけでなく、AIという存在を我々がどう捉えていくのか、考え方の枠組み自体が大きく変わる胎動を感じました。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

手前味噌になって恐縮ですが、「哲学」です。個人的には“一億総哲学者時代”に差し掛かっていると思います。何かのわかりやすいロールモデルを追えばいいのではなく、それぞれが自分のこと、人生や生きる意味を考えることの重要性がより高まっていくと思います。

樫田光 / デジタル庁 Head of Unit

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

外部環境要因。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

為替や経済動向、規制、海外や資源価格など、企業の外にある外部的な要因がビジネスに対してインパクトをもたらすことが多い1年だったと思っているためです。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

スタートアップのような業界でいうと、複雑な外部要因といったファクターが増え、経営の不確実性が上がっています。その中で、資金調達のやりくりなど外部要因を含め、時間かけて構造を味方につけられる円熟した経営者が活躍するのかなと思っています。

桂大介 / リブセンス取締役

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

インパクト。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

日本でも“インパクト”という言葉がよく聞こえた1年でした。昨年末にインパクトスタートアップ協会が発足し、今年は経産省によるJ-Startup Impactも設立。企業が自らパーパスやミッションと紐づけてインパクトを語るようになり、投資の文脈に留まらずに拡大しているように見えます。

実際にインパクトを比較可能な形で計測したり、インパクト加重会計にまで取り組んだりしている企業はまだ多くありませんが、人的資本開示も進んだことで、非財務指標を評価する流れはますます拡大していくと考えています。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

事業活動、人的資本、環境負荷、CSR活動など、さまざまな面でアウトカムの定量化と評価が進み、ますます「社会の公器」としての企業の在り方が問い直されていくと思います。

一方でその流れがあまりにせんぱくに進んでしまえば、実効性についての懐疑が投げかけられるとともに、財務指標重視への揺り戻しが起こるでしょう。企業は目先のトレンドやバズワードに乗るのではなく、評価の意義を真摯に考えることが必要だと思います。

加納千裕 / ASTRA FOOD PLAN代表取締役

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

サーキュラーエコノミー。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

2020年ごろからサーキュラーエコノミーに関する書籍が出版され始め、私も創業当初にビジネスモデルを考える際の参考にしていました。これまで一般的にはあまり認知されていないキーワードだったと思いますが、2023年ごろからさまざまなところで目にするようになった印象です。

ASTRA FOOD PLANが本社を構える埼玉県でも「埼玉県サーキュラーエコノミー型ビジネス創出事業費補助金」という補助金が今年初登場しました(当社は採択されてプロジェクトが進行中です)。世界的な潮流を考えると日本は遅れていると思いますが、国内でも政策によるサーキュラーエコノミーの推進がいよいよ本格的に始まったと感じています。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

廃棄物の有効利用で、リサイクルを超えた「アップサイクル」がトレンドになると思います。現状は「リサイクル」と「アップサイクル」の違いが曖昧になっているように感じます。コストをかけて取り組んでいる事例の多くはまだCSRの域を出ていません。

今後は環境性だけでなく経済性も持ち合わせ、持続可能で高付加価値な製品へ生まれ変わらせることが「アップサイクル」であるという認知となり、「サーキュラーエコノミー」と結び付けた高いレベルでの取り組みが広がっていくと思います。もちろん、私たちASTRA FOOD PLANはその先駆けの存在になりたいと思います。

閑歳孝子 / くふうカンパニー 代表執行役

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

AI。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

少なく見積もってもスマートフォン登場、影響の広さ・深さからするとインターネット登場以来の社会的インパクトを将来に渡りもたらすと考えているためです。

特にChatGPT-4および画像生成AIの登場は「AIの民主化」の象徴的な出来事でした。AIの生成物を受動的に受け取るだけではなく、誰しもが自らの問いをもとに能動的にアウトプットを生成する・活用する側に回れるところが画期的だったと思います。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

「働く」という概念は大きく変わると考えています。 2024年にどこまで進むかは想像できていませんが、人が担う仕事はAIを活用しながら高度な問題を解決する「問いを立てる」ものと、AI化できないラストワンマイルを担うものに分かれていくのではないかと予想しています。

その結果、数十年かけて「働く」ことが必ずしも当たり前ではなくなる未来が来るかもしれません。ベーシックインカムなどの社会制度の整備とセットであることは必須ですが、そのための萌芽が2024年に見えてくるのではと予想しています。

坂木茜音 / スタジオプレーリー共同代表

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

AI、ソーシャルインパクト、BCorp、DX、宇宙、人間中心主義からの脱却。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

コロナ禍を経験したことにより、人類は進化しました。その分、未来を見つめる機会も増えました。企業は「なぜこのサービスを行うのか?」「社会における自分たちの存在意義は?」と考えることも増え、人類は「人間にできることは何か?」「人間がやらなくていいことは何か?」「人間だけの視点で考えない在り方は?」と考えるようになりました。その背景をもとに選定しました。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

同じく「AI、ソーシャルインパクト、DX、宇宙、人間中心主義からの脱却」です。やはり、存在意義を問われる社会、自身に問い続ける社会になると思います。人間や企業や自然や社会という様々な単位で「なぜ存在するのか?」という問いから離れられない年になりそうです。

藤田康男 / Smart相談室CEO

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

人的資本経営。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

サービス提供側としても、経営者としても気になっています。具体的な項目もさることながら、概念として新しい指標等が生まれないかドキドキしています。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

働く人の働きやすい環境、パフォーマンスを上げやすい環境を再定義するような領域に興味があります。

福島良典 / LayerX CEO

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

コンパウンドスタートアップ。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

2022年末に「コンパウンドスタートアップ」という概念が輸入され、ほぼすべてのBtoBスタートアップが標榜するようになりました。プロダクト開発パラダイムの洗練、AIの進化によるでデータを中心とした自動化、VCの巨大化によるリターン期待の増大がコンパウンドスタートアップを後押ししています。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

AI、SaaS、Fintech。労働生産性の向上。物流の2024年問題に代表されるように人口減少社会+労働規制により、生産性の問題が待った無しになります。移民を受け入れる決定が政治的に難しい日本では、テクノロジーを基軸とした生産性向上に取り組まないと社会インフラが成立しなくなるという時代になっています。そこでの救世主はAI、SaaS、Fintechであり、今まで以上にこの領域に投資が集まり社会インフラとしての役割が求められるようになるでしょう。

藤本あゆみ / Plug and Play Japan執行役員CMO

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

生成AI。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

生成AIの話をしなかった人はいないのではないか、というくらい盛り上がった1年だったと思います。また、ChatGPT以前と以後で働き方やコミュニケーションは大きく変わったと思います。歴史が変わる瞬間を目撃した感覚があります。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

今は一方向的なやり取りかと思いますが、対話型AIなど双方向のものが増えてくるのではと思っています。また、翻訳の機能が大幅に向上しており、いよいよテクノロジーにより同時通訳が実現してくる(クオリティ的に満足するレベルになる)のではないかと思っています。

堀井翔太 / スマートバンク代表取締役

──2023年に社会全体で盛り上がったビジネスワードは何でしょうか?

デジタル給与払い。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

今年の4月から労働基準法が改正され、「資金移動業者」の口座による賃金受取が解禁になりました。銀行の専売免許でもあった「給与」を預かるという行為がスタートアップでも可能となり、調達コストがゼロの「給与」という最強の調達手段に手がかかった記念すべき年だったと思います。実際にPayPayなどの大手サービスが申請を始めていると思いますが、これを機に新しく生活をより便利にするようなサービスが生まれてくることを期待しています。

──2023年の動きを踏まえて、2024年はどういった領域がトレンドになると思いますか?

「物価の高騰」や「人手不足」など、個人のお金に纏わる関心ごとや、労働力不足といった人とお金に関する問題は根強く残ると思います。

メルカリの「スポットワーク」事業の参入が話題になっていましたが、生活資金の工面と働き方の柔軟性を担保できるスキマバイトのビジネスは強いトレンドとしてスタートアップ業界で顕著に伸びている分野であり、来年度も躍進を続けると思います。

「お金を稼ぐこと」にプラスして、上記の資金移動業者のFintechと融合することで、「お金を貸す」「お金を増やす」といった「給与」という与信やデータと紐づいた、新しいFintechの進化を模索する年になると思います。

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