あっという間に2023年も残りわずか。年末年始の休暇を活用して、情報のインプットをしようと考えている人も多いのではないだろうか。YOSOROでは過去に取り上げたことのある方々にアンケートを実施。2022年に読んで良かったと思う本を聞いた。掲載は起業家氏名の五十音順。
有川鴻哉 / Hotspring 代表取締役CEO
『物語思考』けんすう(古川健介)(幻冬舎)
本をまったく読まない人間なのですが、けんすう(古川健介)さんの『物語思考』は購入しました。生き方とか人生みたいなものは人類がもっとあらゆる手段でハックしていくようになればいいな…と思っていたので、アプローチの仕方が素敵だと感じました。ちなみに購入しただけで読んでいないので、本を手に持ったときに肌に伝わってきた感想です。
上館誠也 / Shirube代表取締役CEO
『ニコマコス倫理学』アリストテレス(岩波文庫)
古代ギリシアの哲学者・アリストテレスの著書『二コマコス倫理学』です。人生の目的やそこに向かうための考え方、在り方を彼なりの視点で鋭く語っています。当然、古代と現代では前提として状況が大きく違いますから、それそのものを受け止める必要はないと思います。
しかし、古代から現代まで変わらない普遍的に大事なこともこの本には込められていると思っています。変わり続ける時代に、普遍的な考え方を学ぶことは現代人の必須の履修科目ではないでしょうか。
樫田光 / デジタル庁 Head of Unit
『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』 カトリーン・キラス゠マルサル(河出書房新社)
数字に表せる世界(=GDP)とそれ以外の世界(=思いやりなど)といった、いまの資本主義世界が抱える課題に迫った一冊。これはビジネスでも、売上などの数値化しやすいKPIの影に隠れて、ユーザ体験やBadUXの解消といった、長期で本質的なものがサクリファイスされている構造にも繋がっていると感じました。
桂大介 / リブセンス取締役
『訂正可能性の哲学』東浩紀 (ゲンロン)
哲学者であり経営者という異色の経歴を持つ、東浩紀氏の集大成としての一冊。目次を一見すると家族や民主主義について書かれているように見えますが、実際に読んでみると共同体やガバナンスの可能性が検討されており、会社経営にも応用可能な議論が展開されています。
企業の理念がこれまで以上に重要視される今日、こうした理念を10〜20年と鮮やかに保ってゆくためには、まさに「訂正」という行為が必要なのだと思います。入門編とも言える『訂正する力』とあわせて読むのがお勧めです。
加納千裕 / ASTRA FOOD PLAN代表取締役
『NEW TYPE ニュータイプの時代』山口周(ダイヤモンド社)
ある起業家の方が講演の中で取り上げていたことをきっかけに最近読みました。私自身が完全に「ニュータイプ」に一致していたので答え合わせのよう納得感を持って読むことができ、さらに自分自身が経営者に向いていることを再認識することができました。
一方で、これまで不可解に感じていたニュータイプの真逆に当たる「オールドタイプ」への理解が深まることにも繋がりました。本書の意図とは異なるかもしれませんが、オールドタイプの方も組織においてはとても大切で、個人の適性を活かした組織作りをしていかねばと考えさせられました。
閑歳孝子 / くふうカンパニー 代表執行役
『ハイパーインフレーション』住吉 九(集英社)
それなりの数の漫画を読んできたつもりですが、生涯ベスト5に入るほど感銘を受けました。架空の中世ヨーロッパの国を舞台とした経済漫画で、作者の狂気と経済史をとりまく知識が奇跡的なバランスで融合した作品です。何度も大どんでん返しがあり、漫画としての完成度も非常に高い。ジャンプ+で2023年3月まで連載しており、毎週ほかの読者とコミュニケーションしながら読めたのも非常に楽しかったです。
『学習する組織』ピーター M センゲ(英治出版)
社内の輪読会のお題となった書籍。初版から30年以上が経過している、いわば“古典”ですが、今まさにグループ経営に携わるようになった立場だからこそ具象として身にしみる内容が多く印象的でした。数々のビジネス書が出版されてきたここ数十年、人類にノウハウが貯まって改善されてしかるべきにも関わらず、多種多様な人・チーム・事業が交わる会社経営の本質的な課題は、あまり変わっていないのかもしれないという絶望と勇気を感じています。
坂木茜音 / スタジオプレーリー共同代表
『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』小山田 育(クロスメディア・パブリッシング)
サービス立ち上げのタイミングで読みました。「なぜやるのか?」という観点での手法が書かれていて教科書的にいつでも読める場所に置いてます。
藤田康男 / Smart相談室CEO
『戦略の要諦』リチャード・P・ルメルト(日経BP)
わかりやすく、基本的なことがまとまっていて、改めて大切なことを確認できました。
福島良典 / LayerX CEO
『厨房の哲学者』脇屋 友詞 (幻冬舎)
言わずと知れた中華の鉄人、脇屋シェフの自伝です。シェフ50周年をむかえその反省を振り返る本。クレイジーな幼少期から、少量多品種の中華コースの発明、ヌーベルシノワという新しいスタイルの確立の流れはまさに中華料理界のイノベーターです。久々に脇屋シェフの料理が食べたくなりました。
藤本あゆみ / Plug and Play Japan執行役員CMO
『2050年の世界ー見えない未来の考え方』ヘイミシュ・マクレイ (日経BP)
日本を考えるためには世界を見る・考えることが大事だと思って全体感を掴みたくて読みました。2050年の予測を学ぶことが大事なのではなく、“世界を見る”ことの重要さを教えてくれる本でした。
堀井翔太 / スマートバンク代表取締役
『最高を超える(AMP IT UP)』フランク・スルートマン(ダイヤモンド社)
PMF後のプロダクトのGTM(Go-to-Market)において著者の生々しい体験からくる、組織を強くしていく上でのリーダーやマネージャーの考え方や振る舞いに対する非常に実践的なアドバイスを得ることができます。スタートアップ経営者であれば答えのないイシューやトレードオフが発生する意思決定に日々、頭を悩ませていることかと思いますが、読み終えた後にいくつかすぐにでも実践できることが見つかると思います。