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YOSOROアウトプットに妥協しない──元AKB48・板野友美氏が語った、会社経営とアイドル活動の「共通点」
アウトプットに妥協しない──元AKB48・板野友美氏が語った、会社経営とアイドル活動の「共通点」

アウトプットに妥協しない──元AKB48・板野友美氏が語った、会社経営とアイドル活動の「共通点」

2023.10.03
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9月23日、キャリアSNS「YOUTRUST」を提供するYOUTRUSTと採用広報の支援を手がけるNo Companyが合同で主催したデジタル人材対象のキャリアイベント「CROSS BORDER CAREER FES 2023」が、東京・日比谷で開催された。ここでは、「異業界への越境で叶える次の挑戦」というテーマで実施されたトークセッションの模様をお届けする。

登壇したのは、アイドルグループ・AKB48の元メンバーで、現在はライフスタイルブランド「Rosy luce」、スキンケアブランド「peau de bébé」を立ち上げ、経営者として活躍する板野友美氏。モデレーターはビジネス映像メディア「PIVOT」プロデューサーの国山ハセン氏が務めた。

会社経営とアイドル活動に通ずる「共通点」

国山:現在、2つの会社を経営するという新しい挑戦をされていますが、その原動力やモチベーションは何だったのでしょうか?

板野:14歳、中学2年生のときにAKB48のメンバーとして芸能界でデビューしてから、目標を掲げては自己実現を果たすということを十何年とやってきました。それもあって、新しいことに挑戦する、そしてそれを成功させることが好きなんです。

新しい挑戦として起業の道を選んだのは、「女性をエンパワーメントしたい」という思いからでした。私は2021年に東京ヤクルトスワローズの高橋奎二選手と結婚しました。そのときに、周囲の声から「夫を支える妻として家庭に入らなくてはいけない」という固定観念があるように思ったんです。でも、私にはいっぱいやりたいことがある。まだまだ夢がある。女性であっても、どんなバックグラウンド、状況であっても諦めずに夢を叶えたい。

こういう状況にいる女性は、実は大勢いるのではないかと感じました。そこで、結婚・出産を経て育児に取り組む私自身が挑戦することで、そういった女性の背中を押すことができたらと思い、ブランドを立ち上げて私のメッセージを発信していこうと考えました。

国山:起業するにあたって不安もあったかと思いますが、誰かに相談などはしたのでしょうか?

板野:特に相談はしませんでした。過去にブランドを規模の大きい会社のなかで立ち上げた経験はあったのですが、その環境ではできないこともたくさんあって。自分の考えるかたちで動ける、伝えたいことをちゃんと届けられるようにしたいと思った結果、いちばんの近道が起業なのではないかと思ったんです。

2社のうち、ひとつはアパレルブランドを手がけているのですが、私が作りたい洋服がある一方で、コストがかかるために作れないものもあります。その「ここまではお金をかけよう」という投資の判断は、会社を経営しているからこそできるものです。根本にある、ブランドとして発するメッセージはブレさせたくない。それを踏まえると、経営をはじめ自分で全部をやってしまったほうが、発信するメッセージにズレが生じずに済むのかなと考えています。

また、経営はアイドルの仕事と通ずる部分があると思います。どうしたらよりよいものを届けられるか、お客様に何を伝えたいのか。アイドルとして活動していた頃は“お客様との信頼関係を構築する”ことに妥協せず、とても大事にしていたので、会社経営においてもその部分は大事にしています。

国山:プロダクトへのこだわりなど、会社を経営するうえで重視していることはありますか?

板野:「ユーザーとして、自分自身がその商品を本当に使うか」という観点を大切にしています。自分が自信をもって着られる服か、そしてお客様へ「本当にいい商品なんです」と言えるかどうか。もうひとつの会社で手がけているスキンケアブランドも、自分が毎日使える本当にいいものを作りたいと思って取り組んでいます。

一方で、質を追求した結果、製造コストが上がってしまうと経営が立ち行かなくなるので、利益とのバランスも大事にしています。妥協したものを作る、お金儲けに走るといったことで、お客様の気持ちを考えられなくなるのは、いちばん避けるべきことではないでしょうか。商品に対するSNSでの反応やユーザーの方々から届くDMは見ていますし、お客様の声はすごく大切にしています。

課題は「権限移譲」、考えを伝えるために工夫していること

国山:これまでに経験した経営者としての苦悩や、直面した困難はありますか?

板野:組織が大きくなるなかで、権限移譲の難しさを感じています。最初は2人から始まり、人数が3人、5人と増えて、現在は社員と業務委託の方々を合わせて数十人の規模になっています。私の場合、自分で手を動かさないと不安になってしまって。本当はクリエイティブからお金の面まで全部見たいんです。でも、組織が大きくなれば当然それはできないので、人に任せていく必要があります。

特にクリエイティブに関しては、私が頭の中で考えていることをそのまま人に伝えられるわけではないので、「どんどん自分の考えと違う方向に行ってしまうのではないか」と思ってなかなか人に任せられない時期もありました。ただ最近は、企業理念や経営理念、どういう会社にしたいか、私たちはどういうものづくりを大切にしているのかといった、目的や目標を丁寧に教えてあげることを心がけています。

会社に関わるメンバーが同じ気持ち、同じモチベーションでいることが重要だと思います。会社を大きくしたいのか、それともなるべく同じ熱い気持ちでいられるメンバーだけを集めてチームをつくっていくのか。私は後者が良いと考えているのですが、メンバーが少なければできることも限られてしまう。その点をどうするかが、今後の課題でもあります。

国山:自分の思いやビジョン、頭の中に思い描いているものを、人に100%共感してもらうのは難しいと思うのですが、伝え方で工夫していることはありますか。

板野:アナログな方法なのですが、頭で考えていることを付箋に書いて模造紙に貼って“見える化”を心がけています。それを社員の方にデータにまとめてもらっています。言葉で話して伝えても受け取る側の感覚で少しずつズレが生まれる気がするので、ビジョンや考えはなるべく見える化するようにしています。クリエイティブについてはすべて私が見ていて、デザイナーと話し合いながら「もう少しこういう風にしたい」というように伝えています。

将来の計画を書き出し、そこから逆算して今を生きる

国山:何かをプロデュースする、つくり出すときに、根底にあるのは自分が好きなものだと思うのですが、板野さんはいかがですか?

板野:自分自身は何が好きなのかを知ることが、ファーストステップとしてすごく大事だと思います。何にいちばん没頭できるのか。自分のやりたいことと仕事が同じ軸にあると、仕事も楽しくできるのではないでしょうか。自分の好きなことや興味があることは、書き出すようにしています。頭の中で考えていても、書いてみて初めて気付くこともある。色々と書き出してみて、「私ってこういう人なのかもしれない」と考えてみるのも面白いと思います。

また、将来の計画も書き出すようにしています。もともと計画を立てることはあまり好きではなく、「先のことなんてわからないし、今ある事を頑張った先に未来はひらける」と思っていました。ですが、経営者の方々から「2年後にどうなっていたいか、3年後にどうなっていたいかを書き出し、そこから逆算して今を生きるんだよ」とアドバイスされて。

それからは、1年後に会社はこうなっていて自分はこうなっている、2年後には……というように書き出して、そのために今はこれに取り組まなければと考えるようになりました。目標を決めたら「ここまでにこういった状態になっていないといけない。じゃあ今どう動くか」というのが明確に見えてくるので、これはやってよかったなと思いました。

経営者として大切にしていることは、「私自身がブレないこと」です。実現しようとしている目的、目標に対して、自分がどれくらい信じる気持ちをもっていられるか。たとえ自分ひとりではできないことであっても、人と協力したら達成できるのではないでしょうか。ひとりでは難しいことも、色々な人の力を合わせればできることはたくさんあると思います。そういうふうに考えていくのは、大事かもしれません。

新しい挑戦をするときは「一歩踏み出してから考える」

国山:「異業界への越境で叶える次の挑戦」ということで、最後にメッセージをお願いします。

板野:私は、新しい挑戦をするときに「一歩踏み出してから考えよう」と思っています。頭で考えていることは本当に起こるかわからないし、頭で考えている以外のことも起こる可能性がある。踏み出す前に考えすぎるとマイナスな方向に考えが向かってしまうので、「最終的には何とかなる」とポジティブに考えています。

そもそも、新しく何かをやりたい気持ちが抑えられないから、一歩を踏み出すんだと思うんです。私の場合は、一歩を踏み出してみたことでその先に後悔したことはありません。自分がどれくらいやりたいことに対して熱量があるのか、思いがあるのかを考えてもいいかもしれないですね。

14歳から芸能界に入って何も知らなかった私でも、一歩を踏み出して、いまは会社経営をしています。一歩を踏み出すことを恐れずに、「板野友美でもできるんだから私もやってみよう」と思ってくれる方が増えたら嬉しいです。そのために私も、これからも頑張っていきたいと思います。

文=加藤智朗

編集=新國翔大

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